ヒグマと暮らすこと:ハンターさんからの問いかけ

 少し前の話題になりますが、昨年11月に北海道森町でヒグマフォーラムが開催されました。このフォーラムでは、今後のヒグマ対策をどう進めていくか?という観点で、北海道庁や市町村、猟友会、研究者という様々な立場からの話題提供がありました。
 今回話題提供をしてくださったハンターさんは、野生動物の保護管理に理解のある方なのですが、そのハンターさんが自分のお話の最後に、慎重に慎重に言葉を選びながら、こんな問いかけをしました。

クマがこの北海道に住んでいることは素晴らしいこと。
だけど、日々クマの被害に悩まされている住民にとってはたまらない。クマのことが憎いわけじゃないけれど、日々対応に追われているのにクマとのあつれきが全然減らない状況が続くと、大雪山とか知床とか、クマの住むところを一部の地域だけにできないだろうかと思ってしまうときがある。こんな考え方を皆さんはどう思いますか。

 この問いかけに対して、皆さんは何と答えますか?

ヒグマの足跡。一番近い民家まで100m。
ヒグマの足跡。
一番近い民家まで、100m。
 研究者であれば、「遺伝的多様性が…」「生物多様性が…」などと言って、「そんな選択はできません」と言うべきなのでしょうけれど、私個人としては「その選択はアリ」と思っています。もちろん、「クマの近くで生活をするという状況に地域がどうしても耐え難く、棲み分け方や棲み分けた後の管理方法などを利害関係者全員で話し合って選択した結論であるならば」ですが。一方で、行動圏の広いクマを一部の地域に閉じ込めておくのは物理的に非常に困難ですし、その他の地域のクマをすべて駆除できるかというとそれも厳しいでしょう。最終的には、「それならば、現実的にできることはなんだろうか」ということを地域の方々が考えられるようになるのがベストだと考えています。以前このブログにも出てきた町づくりの視点とも通じるところがあるかと思いますが、一部のハンターさんや市町村職員だけが対策に翻弄されるのではなくて、大事なのは地域全体が自分たちの暮らしをどうしたいのか考えることではないでしょうか。保護管理に理解のあるハンターさんにそこまで言わせてしまう現状こそが問題なのではないでしょうか。