生物多様性を脅かす外来種

収穫間近、アライグマの食害に遭ったとみられるスイカ
収穫間近、アライグマの食害に遭ったとみられるスイカ
 “外来種”と聞くと、アライグマ、ガビチョウ、ミシシッピアカミミガメ、ウシガエル、ブラックバス、アメリカザリガニなど、人によって様々な生物を思い浮かべることができます。これらの代表的な外来種に限らず、日本は非常に多種の外来種で溢れ返っており、生態系の破壊や遺伝子汚染、感染症の伝播・拡散、さらには農業被害や人身被害など様々な問題を引き起こしています。例えば、マングースによるヤンバルクイナの捕食、アライグマによるアライグマ回虫の拡散、在来/外来オオサンショウウオの交雑などが挙げられます。

 外来種の定義は「導入(意図的/非意図的)によりその自然分布域の外に生育又は生息する生物種」とされているように、国外のみならず日本国内間での導入も含まれます。その導入経路としては、ペットや産業動物の脱走・放出、輸入貨物への付着や船舶のバラスト水を介したものなど多岐に渡ります。それらの全てが導入地に適応・定着するわけではありませんが、一度定着した種は排除がかなり困難であり、まとまった資金や労力が必要となります。

 日本は「生物多様性条約」の締約国であり、この条約の批准に伴い策定された現行の生物多様性国家戦略2012-2020の中でも、生物多様性を脅かす4つの危機のうち第3の危機として外来種防除の重要性が明記されています。近年では外来生物法などの法整備が進むほか、今春には環境省・農林水産省・国土交通省が協同して外来種被害防止行動計画および生態系被害防止外来種リストを作成・公開しており、外来種防除の機運はますます高まっています。

 現在、日本では外来種対策として国や自治体ならびに研究機関が主導となって様々な対策が講じられています。概ね、わなを用いた捕殺が一般的ですが、フェロモンや嗜好性エサを用いた効率的な誘引捕獲法の検討や、ある動物種では種特異的に繁殖を抑制する避妊ワクチンや選択的に毒性を示す毒エサの開発研究などが進められています。しかし、それらの対象は外来種のまだまだごく一部であり、ますます多くの外来種が日本に導入されつつあると考えられます。外来種捕獲事業や研究分野の推進のみならず、社会的な外来種防除思想の浸透・発展に期待したいです。