重症熱性血小板減少症候群とダニ

 今回は、感染症の中でも最近特に注目されている、重症熱性血小板減少症候群(以下、SFTS)について話題提供致します。

 今回テーマに取り上げた理由は2つあります。
 1つ目の理由は、正しい情報を共有する場が必要と考えるからです。SFTSは、「殺人ダニ」というセンセーショナルなキーワードでマスメディアに取り上げられ、漠然と恐ろしいイメージが先行しています。イメージで恐れるのではなく、SFTSの実態をしっかり知って予防法等を学ぶことが大切です。

 もう1つの理由は、SFTSへの感染機会が多いのが、野生動物に直接的に関わる活動をする人々だからです。野生動物には、SFTSを媒介するマダニが多く寄生しています。野生動物に直接触る人は、これまでは研究者や狩猟者などごく一部に限られていました。しかしこれからは、鳥獣法の改正に伴う認定事業者制度の開始や、アライグマ捕獲を主とした捕獲従事者制度の広がりにより、様々な人々が仕事として関わるようになります。専門的知識や経験知が十分でない新たな従事者に対して、安全管理を第一とし、SFTSなど感染症の情報を知る場を積極的に設けていくことが重要であると考えます。

 さて、前置きが長くなりましたが、SFTSについてです。今回の最新情報は、国立感染症研究所から発信されている情報を引用します。詳細については以下URL等(href=”http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html)をご覧下さい。

オオトゲチマダニ
オオトゲチマダニ

●SFTSの病原体・主な感染経路
 SFTSの病原体は、マダニ自身ではなくマダニの体内にいるSFTSウイルスです。主な感染経路は、SFTSウイルスを保有したマダニの刺咬です。なお、マダニは家ダニとは異なる種類ですし、全てのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではありません。

●SFTS感染時の症状・治療法・致死率
 SFTSの潜伏期間は6~14日間で、発症すると発熱、頭痛、筋肉痛、消化器症状等がおこります。血液の検査をすると血小板や白血球の減少が見られます。現在の治療法としては対症療法しかなく、致死率は10~30%といわれています。

●SFTSの予防法
 マダニの吸血を防ぐことです。過去のSFTS感染者は、3~12月に確認されており、最も多かったのは5月でした。これはマダニが活発に活動する時期に関係します。マダニは野生動物が生息している環境はもちろん、田畑や民家の裏庭などにも生息しています。誰しもがマダニに刺される可能性があることを認識し、マダニのチェックをすることが重要です。もしも刺されていた場合は、むやみに取らずに医療機関にて取ってもらい、その後発熱などの症状の有無を確認しましょう。